前回から2回連続でスピンオフという形で、実践的英語学習を支える重要なポイントを紹介しています。
今回のテーマは、「動詞を制する者が英語を制する!」です。
「動詞は英語の王様」
私が高校生の時に、学校の英語の先生から聞いた言葉です。先生の言葉は英語学習の核心に触れており、今でもよく思い出します。
前項で触れたように、英語は、文章の骨格を先に作り、後から詳細の肉付けを行う言語です。このとき、動詞が主語の次に置かれることで初めて文章の骨格が成立します。また、動詞の種類によってその後にどのような情報が続くかも変わります。
まさに文章全体の構造を決定してしまうほど大きな影響力を持っていることが、動詞が「英語の王様」と称される所以でしょう。
動詞の種類
動詞の理解を深める際に重要なのは、動詞の種類を知ることです。
まず、動詞は主に「自動詞」と「他動詞」に分けることができます。自動詞と他動詞の違いは、主語の動作が自己完結型か否かという点に集約されます。
自動詞の場合は、主語の動作は他の人や物を巻き込みません。
逆に、他動詞の場合、主語の動作は他の人や物に影響を与えます。
主語の動作によって影響を受ける人や物のことを目的語と呼びます。したがって、学習参考書などでは「他動詞の場合は目的語が続く。」と説明されています。
「自動詞」vs.「他動詞」
私の説明はもっとシンプルです。英文で伝えたいことを、棒人間を使って書いてみてください。
例えば、He runs fast.(彼は走るのが速い)という文を、棒人間を使って描写してみましょう。絵の中には棒人間しかいませんよね。「走る」という動作は、主語が動くだけで完結するからです。そう、ここで使われている「run」は自動詞です。
次に、He broke the window.(彼はその窓を割った)という文を描写してみましょう。棒人間の他に、割れた窓を描きませんか?割れた窓を描かずして、棒人間単体のみで「break」という動作を表現することはできませんね。
なぜなら、「break」は他動詞だからです。「break」という動作は“何を”壊したのかという情報なしには成立しないのです。
したがって、他動詞の後には必ず主語の動作に影響を受けるものが続きます。今回の例でいうと、彼が「break」したもの、つまり彼によって「break」された「window」が続きます。
これはつまり、他動詞から構成される文は、受動態に言い換えることもできるということを意味します。
一方、自動詞を受け身にすることは不可能です。なぜなら、主語の動作は自己完結するからです。
自動詞と他動詞の違いは理解していただけましたか?
「私は割った。」まで読んだときに、「何を?」という情報がないと気持ち悪い、と思うことが大事です。
つっこみをいれなくてもスムーズに文章として成立している(自動詞)なら問題ありませんが、他動詞の場合はつっこみに対する答えを常に意識しなければいけません。
動詞の違いを知ることが実践的英語学習の中でどう生きてくるか
動詞のうち、特に重要なのは他動詞です。アウトプット(書いたり話したり)をする際に、他動詞を使いこなせるかどうかが非常に重要になってきます。
基本的には、動詞の意味が通るように目的語をくっつければ文章は完成します。難しいのはどのような目的語をくっつけるかです。自分が感じたつっこみどころと、その動詞が自分の後に続くことを期待している情報が異なる場合があります。
そうした違和感を是正していくためには、インプット型学習(読んだり聞いたり)を進める際に、他動詞の後にどのような目的語が続いているか注目する癖をつけることが重要になります。自動詞だと思っていたものが他動詞だったりすることもあるので要注意です。動詞は英語の王様ですから少しわがままだったり、変わり者だったりします。
例えば、「~について議論する」と訳される「discuss」。日本語的感覚では、「about」を「discuss」と「discussされる内容」の間に挟みたくなりますよね。ただ、「discuss」という動詞は議論内容とセットでなければ意味を成しません。したがって、「discuss」の直後には必ず目的語として「議論のトピック」が続きます。
インプット学習の際、動詞の語法に関してはメモを残しましょう。違和感が徐々になくなってくると、自分で英語を作るときに感覚や経験に従って正しく動詞を使うことができ、少しずつ自然な英語が書けるようになっていくでしょう。