▪留学期間:2019年9月〜2020年6月
▪留学先:フランス国立東洋言語文化大学(イナルコ大学)(仏語名:Institut National des Langues et Civilisations Orientales)
▪ブログ著書:天野優里(東京外国語大学 言語文化学部 フランス語学科 2019年卒業、東京外国語大学大学院 国際日本専攻 在籍)
フランス・イナルコ大学を選んだ理由
私は学部でフランス語を専攻し、大学院では日本語教育を勉強していたため、日本学部があり、フランスの中でも日本語教育が進んでいるイナルコ大学に留学することにしました。どのように授業が行われているかに興味があり、また修士論文のための調査も行う必要がありました。さらに教育学部の授業も履修でき、留学生のためのフランス語の授業もあることも留学の決め手になりました。
「自分の中の常識」の変化
大学1年生の時に旅行でフランスを訪れたことがあったのですが、留学は短期間の旅行とはもちろん異なり、多くの困難を経験することになりました。学校で勉強したフランス語と話し言葉のフランス語が違い、思うようにコミュニケーションが取れない。対応してくれる人によって言うことが違い、どんなに頑張っても事務手続きがうまくいかない、などは日常茶飯事でした(郵便局、通販の返品、保険、市役所などどれも想像の何倍以上も大変)。授業で先生やクラスメートが話していることが理解できず、自己嫌悪に陥ることもよくありました。しかしこのような状況の中でも、手を差し伸べてくれる方がいて、人の優しさを一層強く感じることが多かったです。自分も常に他の人を手助けできるような存在でありたいと思うようになりました。
日本とは異なりストライキやデモが本当に多かったのも驚きでした。たまたま中心街を歩いていたら大きなデモに遭遇し、権力に立ち向かうその強い姿勢に圧倒されたのを鮮明に覚えています。また、パリは色々な地域出身者が多く、電車でもフランス語だけではなくアラビア語、アフリカの言語、中国語などがよく飛び交っていました。ただ社会問題も多く、ホームレスの方が駅で警察に追い出されていたり、駅で「お腹がすいた」という看板を立てて床に伏せてお金を集めている方がいたり、4、5歳の子どもがメトロの中で手を差し出して何も言わずに寄ってきたりなど、見ていて苦しくなる場面も多かったです。どうするのが最善なのかがわからず、自身の勉強不足に悩むことも多くありました。
そしてフランスは日本よりも個人主義の風潮が強いので、他人がどうしているかよりも自分がどうしたいか、何を考えてどういう行動を起こすのかについてもっと自分自身の頭で考えることが必要だと実感しました。
大学内・大学外での交流
日本学部があったため友達がすぐにでき、お互いに言語を教えあうこともありました。またアフリカダンスのサークルにも参加していたので、他の学部の学生との輪を広げることもできました。学外ではキゾンバというダンスを踊りに行っていたことから、大学外のコミュニティも広がりました。フランス文化だけでなく、アフリカの文化も多く学ぶことのできた留学でした。
約1年の留学を通して
フランス留学を通して、今までの自分の世界がいかに小さいものだったのかに気づきました。もちろん精神力も鍛えられましたし、生き抜く力もついたと思います。本来は教育学やフランス語を学ぶことが目的でしたが、それ以上に人との出会いや様々な文化に触れることで成長できたと思います。大規模なストライキが終わったかと思えば新型コロナウイルスの流行が始まり、波乱の年でしたが、周りの人にたくさん支えられた1年でした。新型コロナウイルスの影響でロックダウンになった時は友人のご実家に滞在させてもらい、大変なながらもフランスの文化を学びながら生活を送ることができました。大変感謝しています(コロナ禍の暮らしについては次の機会に述べます)。
「フランス留学」と聞くと漠然とキラキラとしたイメージが思い浮かぶかもしれませんが、楽しいこともある一方、今まで経験したことのない困難や問題に立ち向かわなければならないことも多くありました。ただ同時に混沌とした部分も持つパリ、そして東西南北に様々な文化を持つフランスのことが一層好きになりました。
ぜひ好奇心を持ち続け、興味のあることに挑戦してみてください。思わぬところでコミュニティが広がり、新しい知見が得られることもあると思います。