第11回「具体的な英語の学習法(アウトプット型学習編)」

「アウトプット型学習」とは?

前回は、実践的英語学習の中のインプット型学習について説明しました。

今回解説する「アウトプット型学習」は、インプット型学習で自分の中に吸収した英語を実際に自分のものとして使えるようにするための学習法です。アウトプット型学習は、ライティングとスピーキングの実践的学習で構成されます。

 

「アウトプット型学習」が「インプット型学習」を完結させる

「インプット型学習とアウトプット型学習は相互に結びついている」という大前提を思い出してください。どちらか一方が欠けると、実践的英語学習は成り立ちません。

前回、インプット型学習はアウトプットを常に意識しながら取り組むべきという話をしましたが、実はむしろ、インプット型学習はアウトプット型学習とセットで行わなければ効果が激減します

アウトプットする(=自分で英語を組み立てる)ためには、前提としてインプット型学習で吸収した英語が自分の中に定着している必要があります。インプット学習の範囲内ですべてを定着させられると良いのですが、なかなかそう簡単にはいきません。

実はインプットした内容が本当の意味で定着するのは、アウトプット型学習において、インプットした内容を思い出そうとする瞬間なのです

アウトプットがうまくできなくても、その後に、自分で調べたり人に質問したりすることで、記憶が蘇り、その繰り返しによって定着していきます。

つまりアウトプット型学習では、インプットした内容の「発信」だけではなく「定着促進」も同時に行っているというわけです。

こうした点を強く意識すると、「アウトプット型学習は、できたらやろう。インプット型学習をたくさんしているから、アウトプット型学習はしなくてもいいや。」というような考えは一掃されるはずです。アウトプット型学習までやり切って初めて実戦型英語学習は完結するのです。

 

アウトプット型学習のポイント 〜英語的思考回路を育てる〜

ライティング・スピーキングのいずれにおいても特に意識してほしいのは、英語的な思考回路で英文を組み立てることです。英語と日本語は文構造が全く違うため、日本語を介在させることは英語的思考の妨げになります。

英語的な思考とは、一言で表すと『骨格(抽象的な情報)→肉付け(具体的な情報)』です。原則として、まず文章全体の骨格を作り上げてから肉付けを行います。

主語+動詞+目的語という基本的な語順からも見て取れるように、英語は大きな結論から先に持ってくる言語です。主語の後にまず動作(動詞+目的語(他動詞の場合))を置き、文の骨格をはっきりさせるのです(動詞が最後に配置される日本語とは、全く異なる思考回路だということが分かると思います)。

ただ、主語と動作のみでは文が抽象的なものにとどまります。そこで、具体的な情報を付け加えていきます。簡単な例を使って考えてみましょう。

 

英語:Studying English deepens your understanding on things happening in the world.

日本語:英語を勉強することで、世界で起きていることへの理解が深まる。

英語的思考回路の分解:

「英語を勉強すること」が主語。(主語は何するの?)

英語を勉強することは深める。(何を?)

あなたの理解を深める(何に関する?)

世界で起こっていることへの

 

英語の場合、まず「英語を勉強することはあなたの理解を深める」という結論を先に持ってきます。この後に、結論をより具体化するために「世界で起こっていることへの理解」という修飾部分をペタペタとくっつけていきます。英文を左から右に読み進めるにつれて、段々と焦点が絞られていくイメージが伝わると嬉しいです。『骨格→肉付け』の原則を守るためには、主語の後に動詞が続くのはとても自然なことだというのが分かっていただけたでしょうか。

 

以上のことから皆さんに理解していただきたいのは、単純に日本語の単語を英語に置き換えるだけでは自然な英文は作れないということです。アウトプット上達の鍵である『骨格→肉付け』の英語的発想を実践する上で、重要なことは以下の二点です。

 

①言いたいことをかみ砕こう!

日本語と英語は作文の発想が異なるので、英語を組み立てる時に日本語を介在させてはいけないと説明しました。では、どのように英作文を行えばいいのか疑問に思う方が多くいると思います。

答えは、頭に絵(イメージ)を思い浮かべて、それを『骨格→具体』の原則に当てはめて言語化していくことです。

一番初めに日本語が思い浮かぶのは仕方ないのですが、結局何が言いたいのかを一度頭の中で整理する作業が必要です。いったん日本語が介在する余地を消して、代わりにイメージの力を借りながら、言いたいことの本質に到達するまで元の文をかみ砕いていくのです(−たとえば、「文をかみ砕く」という日本語を一発で英語に訳そうとすると容易には訳語が思い浮かびませんが、「かみ砕く」という言葉が示す”本質”は、結局のところ「文を壊して/分解してシンプルにしていくこと」です。このように思考すると、”break down the sentence”などと自然な英語を導き出せます−)。本質まで文章をかみ砕くことで、身近な単語で表現をすることが可能になります。

この「かみ砕く」作業をマスターすると英作文が格段にやりやすくなるので、別の連載で一緒に練習してみたいと思います。

 

②動詞の使い方には注意!

『骨格→肉付け』の原則を実践しようとしても、動詞の使い方に気を遣っていないとうまくいかないことがあります。主語と動詞までは原則に従って配置できても、その後がなかなか難しいですよね。

実は、そうしたときにキーになってくるのが「動詞の語法」です。動詞は英語の王様としばしば称されます。それだけ、後に続く英語に大きな影響力を持つからです。

『骨格→肉付け』の原則に従っても正しい英語が書けないという人は、もしかすると動詞の語法が身についていないのかもしれません。間違えたときに動詞の使い方が適切だったか、ネイティブ(の先生など)に確認してみることをおすすめします。(動詞に関する話も別の連載で解説します。)

 

アウトプット型学習の実践(ライティング)

アウトプット型学習の実践は一人ではできません。日記を書いたり、小論文を書いたりして、それを(できれば日本人ではなく)ネイティブの人に確認してもらうことが重要です。

量に関しては、小論文ならば一日250wordsが一般の大学生レベルです。高校生なら200wordsを30分以内に書けると理想的です。

小論文やエッセイを書くときに重視するべきことは、内容的なまとまりを作ることです。

言い換えると、Introduction(結論・導入)-Body(本論)-Conclusion(結論をもう一度持ってくる)の構成が保たれる必要があります。英語は文レベルでも文章レベルでも結論を最初に述べる言語であることを忘れないでください。起承転結の構造は英語の小論文やエッセイには適さないでしょう。

日記に関しては、量を気にしすぎる必要はないと思います。仮に日本語で書くとしたら何をどのくらい書きたいか決めて、そのラインに近ければ近いほどよいでしょう。構成も自由でかまいません。

 

アウトプット型学習の実践(スピーキング)

スピーキングも英会話に通ったり、学校のネイティブの先生と話してみたりすることで練習できます。

ただ、スピーキングはライティングと違い「瞬発力」が求められます。これは実際に人と話す経験を積まない限り手に入れることができません。

スピーキングは伝わりさえすればいいとよく言われますが、そういった妥協は長期的にみると逆効果です。単語を適当に並べるだけで会話が成立することはほぼありません。

つまってもいいので、常に英語的発想で正しく左から右に英語を並べることを意識してください。方法が「書く」から「話す」に変わっただけで、英作文のポイントは当然スピーキングの練習にも共通しています。

ネイティブの英語に近付くために、誤った方向に力を入れる人が多くいます。一番の問題は早口でふわふわっと発音しようとすることです。なまりをもった話者が早口で話すときほど聞きづらい英語はありません。

大事なのは話すスピードではありません。しい発音ではっきりと、英語的発想で完成した文章を並べることです。

練習を繰り返すうちに、英語を並べる作業がスムーズにできるようになってきます。はっきり発音すると聞き手も情報をキャッチしやすくなるので、間違いを正してもらえる可能性が高まります。

臆することなく、自信をもってそして焦らずアウトプット力を磨きましょう。