不登校から東京外国語大学合格まで 〜生きづらさを抱えたあなたへ〜

これはHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる、周りの環境にとても敏感な谷山薫(たにやまかおる)さんが、二度の留年を経て九州のとある県立高校から東京外国語大学・言語文化学部チェコ語学科に合格したライフストーリーです。

第1章
高校入学~留年

第2章
留年後~二度目の留年

第3章
二度目の留年~引きこもりへ

第4章
引きこもり~東京外国語大学オープンアカデミーとの出会い

第5章
東京での新しい出会い

第6章
大学受験の決意

第7章
大学受験失敗と再挑戦

最終章
二度目の挑戦~合格へ

補足1『HSPについて』

 昔からどうにも生きづらいと思い、それをどう説明するべきか奮闘してきた。アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)だからか、それとも他の発達障害をかかえているからか。ハーフであることは無関係ではないかもしれない。しかし、今まで探してきた中で、一番納得がいくものはHSPという概念だ。HSPとは、Highly Sensitive Personの略で、とても敏感な人のことである。特徴としては、音や光などの外界の刺激に敏感で強い刺激を受けることに耐えられなかったり、非HSPに比べて良くも悪くも物事を深く考えたり、人と出会うことで緊張しやすく、すぐ疲れてしまうことなどが挙げられるが、HSPだからといってこれらの特徴が全て当てはまるとは限らない。最近HSPに関する書籍が増えてきたり、テレビ番組でも取り上げられたり、HSPに関するサイトなども増えてきた。HSPの認知度は高まってきているが、それでもまだまだ低いだろう。

 私がHSPのことを初めて知ったのは、まだ留年していない2年生だった2015年頃だった。どうして自分はこうもしんどいのだろうと思いつめているときに、学校から帰宅する途中で本屋に寄ったところ、「敏感すぎて困っている自分の対処法」というタイトルと顔を真っ青にして焦っている女性の顔のイラストが印象的な本が私の目を引いた。後日その本を買って、まずその中にあるHSPチェックテストを行ったところ、ほとんどの項目が当てはまり、残りのページに書いてあることも自分に当てはまることが多く、少しずつHSPが普段困ることに対する対処法を実践してみた。

 その後様々な出来事があるうちにHSPについて忘れかけていたが、2019年の予備校に通っている頃にたまたまHSPに関する動画がYouTubeに上がっているのを見た。その動画で説明していることは、HSPはもちろん、非HSPにとっても有益と思われる情報が多く、穏やかな人間関係を築いたり、穏やかな生活を送ったりするコツを紹介している。普段の生活で役立てられる情報が多かったので、その時から現在まで定期的にその動画を視聴している。

 HSPは、一部特徴が自閉症スペクトラムなどの発達障害と共通するので誤解されることが多く、私もかつて誤解した一人である。そして、HSPは病気や障害と思われることも多いが、これは「気質」を表すもので、病気でも障害でもない。HSPは普段の生活で苦しむことが多いが、一方で、人生を深く味わうことができたり、環境さえ合えば自分の才能を存分に発揮できる可能性を秘めていたりする。HSPについての世間の認知度や理解が高まり、非HSPがHSPに配慮してくれるとともに、もっと自分がHSPであることに気づく人が増えて、何とも言えない生きづらさに対処する術を身につけて、HSPがもっと生きやすくなるように願っている。

補足2『鬱と脳機能の関係について』

 鬱状態のときは脳の働きが低下すると言われている。そのせいか、実は調子がどん底のとき(特に2015-16年)の記憶はあやふやになっていて、はっきり思い出すことができない。そのためこの文章も一部母から聞いたことを基にして書いた。

 心療内科を受診した時もストレスチェックというものを受けたのだが、それはスクリーン上の数字やひらがなを順番に押すという、いわゆる脳トレのようなことをした。それを受けた時おそらく鬱状態で、とてもイライラしながら画面上の数字やひらがなを押したことは覚えている。その脳トレの成績がストレスの度合いとして測られ、私の成績は悪く、ストレスの度合いも高かった。

 しかし、鬱状態の時に脳の働きが低下しているのは後にあまりに辛い経験をできるだけ思い出さないようにするための脳の仕組みなのではないかと思っている。あのときは脳にただ休んでもらうことが必要だったのだろうと今では考えている。