天野優里のフランス留学体験記「フランスでのコロナ禍における生活の変化」

②「フランスでのコロナ禍における生活の変化」

徐々に大きくなっていった不安

3月 パリのパン屋さんの看板「コロナパンデミックの状況なので、皆の為にソーシャルディスタンスを保ってください。(パンデミックが終わるのを)待つ間、美味しいものを食べて癒されましょう」

 私はパリに住んでいたのですが、2月には新型コロナウイルスの流行が中国で拡大しているとニュースでもよく聞くようになり、マスクをしている観光客も見かけるようになりました。アジア人に対する暴力事件や嫌がらせ、差別なども報道され、私も周りの目が気になるようになりました。ただ、まわりのヨーロッパ出身の友人らはあまり心配している様子ではありませんでした。そのうちフランスでも感染者が出て、2020年3月12日に翌週から大学が全て休校になると決定され、3月15日からは生活必需品を売る商店以外は閉鎖されましたが、行き場を無くしたパリジャンらは公園に集まってピクニックを楽しんでいました。フランスらしいといえばフランスらしいのですが…。スーパーでは買い占めが起こり、マスクや消毒ジェルも売り切れ、パン屋では店員さんが手袋をして、パーティションも設置されるようになりました。(いつもであれば店員さんはお会計をしたそのままの手でパンを直接触ります。)そして3月16日に翌日の午後から外出制限が実施されるとアナウンスされました。このアナウンスが出るまでの流れが本当に急で、気持ちがついて行くのが大変だったというのが正直な気持ちです。(少なくとも日本人の友人も同じ気持ちでいたようです。)私を含めた日本人の留学生は帰国するか否かでとても混乱していました。「帰りたくない」という強い思いと「帰らなければならないのか…」という気持ちの葛藤でした。私の友人の中では約半数がすぐに帰国し、約半数がフランスに残ることにしたと思います。私はありがたい事にフランス人の友人が「一緒に実家に来たら」と提案してくれたので、連れていってもらうことにしました。住んでいた寮では、大きなスーツケースを持って帰省するために出て行く人が多く、寂しい気持ちになりました。

ロックダウン中の生活

 3月17日の午前にパリ近郊のフォンテーヌブローに移動しました。最初は2週間ほど滞在する予定でしたが、結局ロックダウンが終わる5月まで滞在する事になりました。
 友人のご家族はとても優しくオープンで、日本やアジアの文化にとても興味を持ってくれたので、楽しく過ごすことができました。
留学先の大学の授業はオンラインで続き、試験もオンラインで行われました。それと並行して論文に使用するアンケート調査を作成したり、東京外国語大学大学院のゼミに参加したりして修士論文に関する作業も進めました。就職活動も本格的に始め、オンラインでESを作成し、webテストを受験し、面接を受けるという生活でした。(スーツはフォンテーヌブローに持ってきていなかったのでシャツとジャケットを貸してもらいました。) オンラインになったことで大学院のゼミに参加できたり、日本での就職活動ができるようになったりしたことは幸運だったと思います。
 ロックダウン中、週1回スーパーに行く以外はたまに散歩に行くくらいでほとんど外に出ることはありませんでした。庭で卓球をしたり、家の中で筋トレをしたりするくらいだったので、今思えば運動不足でした。
 また、就職活動や授業以外は料理をすることが多かったです。フランスの家庭料理と私が作る料理を一日おきに食べるような生活で、お互いの文化を知ることができてとても面白かったです。私はフランスでホームステイをしたことがなかったのでとても貴重な経験になりました。(まさか「あんこ」を小豆から作ったり、餃子の皮を小麦粉から作ったり、寿司を作ったりする事になるとは思いもしませんでした。ただ友人のご家族がとても喜んでくれたので嬉しかったです。)
 帰国も、就職活動もその後どうなるのか全く分からなかったのですが(ロックダウン中に帰国便がキャンセルされたと連絡があり、帰国日を6月末から延長して7月末にしました。) とりあえず目の前の事に集中して毎日を過ごす事にしていました。

4月 ロックダウン中 天気がいい日はテラスで昼食をとっていました
5月 ロックダウン中 生で食べられるサーモンを見つけたため日本食パーティーをしました
5月 パリの電車内 ソーシャルディスタンスを保つために立っていい場所、座ってはいけない場所にステッカーが貼られていました

パリに戻った後

 5月半ばにパリの寮に戻りました。もともとマスクをする文化が無いフランスでマスクをしている人々を見るのは変な感じで、「ものすごい転換を目の当たりにしているよね」と友人としみじみ話したのを覚えています。私は、留学の残り期間をできる限り充実させられるように、適切な距離を保ちながら美術館に行ったり、公園に行ったりする生活をしていました。

おわりに

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて一気に環境が変わってしまいましたが、ロックダウン中も友人とご家族のおかげで、鬱々とせずに前向きに授業や就職活動に取り組めました。いつもと違う環境の中で、できることに集中することも大事だと実感しました。
(7月末に無事に帰国いたしました。)