第10回「具体的な英語の学習法(インプット型学習編)」

「インプット型学習」とは?

インプット型学習とは、リーディングとリスニングを広く指します。しかし、皆さんが慣れ親しんでいるリーディングやリスニングとは少し違うかもしれません。

今回の連載では、インプット型学習に焦点を絞り、実践的な英語力を身につけるための具体的な学習法を紹介します。いつものご自身のリーディング・リスニング学習と比較してみてください。

 

アウトプットを意識してインプットをしよう!

大前提として、「インプット型学習とアウトプット型学習は相互に結びついている」ということを常に意識しましょう。

「アウトプット型学習」では、“インプット”した英語を実際に自分のものとして使えるように練習します。その際、当然ですが、インプットできていないものはアウトプットしようがありません。つまり、目標とするレベルのアウトプット能力を得るためには、それを上回るレベルの英語をインプットしなければならないのです。

ですから、少し難しいなと感じるレベルの英文に臆せずどんどん触れていくことが重要です。

 

 インプット型学習におけるリーディングについて

インプットする内容や量は、その人の目的や目標によって変わるものだと思います。

たとえば、社会で通用する実践的な英語力を習得するためには、どのようなインプット型学習が必要か考えてみましょう。

A4サイズにぎっしり書かれたニューヨークタイムズの社説レベルの内容を、2分で1ページのペースで、50ページ位ノンストップで、毎日2セット読むことでしょうか。

私の場合は、上記のレベル、ペース、そして量が、日本語で可能な一日の読書量と釣り合うと思います。母国語と変わらないレベルで英語を操れるようになりたいと目標設定した場合、このくらいのインプットが必要でしょう。

とても大変なことに聞こえるかもしれません。

ただ、いきなりハイレベルなことをする必要はありません。すべてのレベルの学習者に共有するポイントは、常に学習の目標を念頭におき、目標達成のための確かな戦略を持つことです。

 

誰にでも実践できる「量 重視」インプット型学習

目標「以上」のレベルのリーティングを実践する際に、内容の難しさや読むスピード以上にまず優先してほしいことがあります。

それは「量」です。

量は能力に関係なく自らの意志次第で調節できます。

 

たとえば、日常会話で自由に英語が使えるようになりたい中学3年生Aさんがいたとします。彼/彼女にニューヨークタイムズを読ませるのは適さないでしょう。ほとんどの中学生にとってニューヨークタイムズは難しすぎますし、語彙的にも内容的にも日常会話とは方向性がかなり違います。

もっと単語・内容共にレベルを下げたものを使うべきです。

私なら、Aさんにはハリーポッターを英語で読むことを勧めます。ハリーポッターでは、日常的な場面が多く登場します。

そして、一番重要なのは、「量」です。標準的な中学3年生なら一日10ページは読んだ方がいいと思います。(高校生なら20ページ程度でしょうか。)これらの量設定は、標準的な中学生や高校生の忙しさを踏まえているつもりです。

読む際には、なるべく連続で読み通すことが鍵になります。学校の予習課題のリーディング量に満足してはいけません。あれは読んだことになりません。通常の本だとひと段落分にもなりません。会話能力を高めるためにも、まとまった文章を書くにも、まとまった英語を読むことに抵抗を感じていたら目標を達成できません。

そして少ししんどいくらいの量を読み続けることで、様々な英語に触れることができるというメリットはさることながら、まとまった量の英語に慣れてきます。

 

こうしたインプット型学習を続けると、より少ない抵抗でアウトプットができるようになってきます。

基本的に読めないものは書けませんし話せません。インプットよりもアウトプットの方がはるかに難しいのです。

だからこそ、アウトプットに求めるレベルより少し上のレベルをインプット型学習では実践しなければなりません。

 

「量」を調整することによってどのレベルの学習者もそれぞれのインプット型学習に取り組むことができます。

インプット型学習から「量」という要素を外すと、ただのリーディング学習です。しかし、それでは実践的な英語力は身につかないのです。

ちなみに、高校生なら毎日ニューヨークタイムズの社説を3本は読むことをお勧めします。大学生になって専門的な英語の論文を読んで、それについて発信するためには、高校生の時からしっかりとインプット型学習を行う必要があります。

ニューヨークタイムズ(ネット版)は有料登録が必要ですが、その価値は十分にあると思います。

ニューヨークタイムズは難しすぎると感じる場合は、The Japan Timesをお勧めします。社説がとっつきにくい場合は、自分の興味のあるコラムやエッセイ欄を読んでみるのもお勧めです!

 

インプット型学習におけるリスニングについて

実はリスニングについても全く同じことが言えます。中学生なら、一週間に一度、洋画を英語音声英語字幕で観ることをお勧めします。

高校生なら2日に一回は30分くらいのまとまったニュースを、YouTubeを通じて聞くのがよいでしょう。

ずっと学術的な英語ばかり聞いていられない場合は、Amazon PrimeやNetflixに登録して海外ドラマを視聴するのもよいと思います。無料で手軽に聴ける英語圏のPodcast番組を、通勤や通学のお供にするのもいいですね。

 

インプット型学習を実践する際の注意点

インプット型学習において重点的に鍛えていきたいのは、英語を自然に左から右に処理する持久力です。とにかくテンポを意識しましょう。

日本語に置き換えるのではなく、英語を英語として読む訓練だと思ってください。分からない単語があっても、すぐに止まって辞書を引くのは良くありません。文脈や接続詞をしっかり意識した上で、分からない単語も予測してみましょう(その単語の意味が分からないと全く読み進めることができない場合は、英英辞典を惜しまず引きましょう)。

そのようにして経験を積んでいくにつれて、よく見かける単語が頭の中で自動的に浮かび上がってくるはずです。そして、その時には大体意味の見当がついているでしょう。

 

こうしたアドバイスは、インプット型学習において多くの「量」を連続して読むことが大事だというポイントを踏まえたものです。

いちいち辞書を引いたり和訳したりしながら読んでいると、量が稼げません。

 

では、多くの量をこなすにあたって、どのくらいのレベルで理解できる教材を選べばいいのでしょうか。

リーディング・リスニング共に、75%程度の理解度が担保された教材を使うとちょうど良い学習負荷を得ることができます。

リーディングの場合、分からない単語が多すぎると、流れを追おうとしても空気を掴むような感覚に陥ります。単語をいちいち調べないと前に進めないようでは、時間が取られ、疲れてしまいます。

リスニングの場合、スピードについていけないときは何度も止めたり巻き戻したりして確認していき、2巡目、3巡目と進むにつれて止める回数を減らしていく方法が有効です。

それでも聴き取れない場合は、75%くらい理解できるリスニング教材にレベルを下げましょう。そして、同時進行でリーディングの練習に力を入れてください。なぜなら「読めないものは聞けない」からです。

リーディングで単語レベルや文法理解度を着実に上げていくことで、リスニングのレベルも少しずつ底上げされていきます。

 

🌟アウトプット(話すこと・書くこと)との結びつきを意識する。

 🌟100%理解できなくてもいいから、たくさんの量をテンポよく。

 🌟目標に合った教材を選んで、たのしく継続!

これが「目黒流・実践的インプット型学習」の極意です。

さあ、今日からインプット型学習を実践してみましょう。