インタビューブログ『農業で「根」のアイデンティティを築いていく 〜「うちで農園」と園芸福祉〜最終章』 うちで農園農園長 小勝正太郎さん

インタビューブログ

農業で「根」のアイデンティティを築いていく
〜「うちで農園」と園芸福祉 〜

うちで農園 農園長 小勝正太郎さん


リンガハウス教育研究所の近くにある農園、「うちで農園」。

この農園は「援農ボランティア」という形で、心の調子を崩されている人々が緑ある環境の中で体を動かせる機会を提供しています。
今回は、「うちで農園」の農園長で、東京外国語大学にゆかりのある、小勝正太郎(おがつしょうたろう)さんにお話を伺いました。(全8回)

第8回(最終回) 「若者の心の健康」と「グローバル」

援農ボランティアで人々に寄り添い続けている小勝さんが、最後に、現在感じている「若者の心の健康」や「グローバル」に関する考えについてのご自身の考えを話してくれました。

うちで農園さんのホームページで“日本の若者の”心の健康”について述べられていましたが、小勝さんはこのことについてどのように考えられているか、詳しく教えてください。

小勝さん:「この問題には生きていくための根本である働き方と家族の問題が関係していると考えています。近年、終身雇用の体制が崩れたことや、非正規雇用であることによる不安、共働き・核家族・ひとり親家庭といった孤独を感じる場面が多くなりました。これにより人々、特に若者にとって、生きるための土台である「根」の部分が不安定になり、心の不調にもつながっているのではないかと感じています。 また、リモートワークやおうち時間の増加などコロナ禍でも大きな変化が起こったことで、「根」の部分がさらに揺らいでしまったと思います。」

心の不調を訴える若者に対して農業ができること、特にコロナ禍でメンタル不調を訴える学生に対するアプローチとして、どのようなものを考えていますか。

小勝さん:「“半農半X”といった農業を組み込んだ働き方の実現が、心の健康に対していい効果をもたらすのではないかなと思います。このような働き方によって会社外で過ごす時間が増え、時間の余裕も生まれ、孤立を感じることが少なくなるのではないかと考えています。「農業を組み込む」といっても、「レンタル農園」を利用してみるなど、気軽に始められるところから取り組んでみてもいいかもしれませんね。 学生さんに対しては、やはり“援農ボランティア”が有効だと思います。ただ、一般的な援農ボランティアでは年齢層が高い、受け入れのノウハウがないという課題があります。そこで、近隣の大学と連携し学生さんが援農ボランティアに参加する機会を設けるのが良いと考えています。実際に、昨年東京外国語大学の望月圭子研究室と連携し学生さんが農業に触れる機会を作りましたが、学生さんの笑顔が見られて非常に良かったです。 」

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うちで農園スタッフの皆さんと東京外国語大学望月圭子教授
小勝さんご夫妻

最後にこの記事を読んでくださっている皆様に伝えたいことはありますか。

小勝さん:「では、農業とグローバルについての私の考えをお話しします。私はコロナ禍の今は、“グローバル”と“ローカル”の関係性を改めて考える良い機会ではないかと考えています。“グローバル”とは遠い存在に対しての愛、“ローカル”とは近い存在に対しての愛だと解釈しています。遠くの国の難民を助けることはもちろん尊いことですが、そのような志を持つ人であっても、なぜか目の前で大変な思いをしているホームレス状態の人の支援には無関心である場合があります。果たしてそれで良いのか、私は大学生時代、この疑問にぶつかってから“ローカル”を意識するようになりました。現在、世界に目を向けている方も多いと思いますが、コロナ禍で遠くに行きにくいこの時期に、ローカルエリアについて調べたり、探索してみるのはどうでしょうか?新しい発見、面白い発見があるかもしれません。
また農業を通じて”ローカル”について知ってもらえると嬉しいです。農業は、“ローカル”の人やものと関わる機会が多く、地域の魅力を再発見・再発掘することができます。“グローバル”に目を向けてきた方も、私のように、自分自身の“根”の部分は“ローカル”にあるのだと捉える場合もあるかもしれません。皆さんには、一度自分自身の“ローカルアイデンティティ”を見つめて、“根”の部分を大切にしてほしいなと思っています。」

*冒頭の写真は、西武多摩川線をバックに、農園での小勝さんご夫妻。

 

うちで農園

公式HP: 
https://uchidefarm.com/

公式Instagram: 
https://www.instagram.com/uchidefarm/

農園・直売所:東京都府中市紅葉丘3-49
アクセス:
西武多摩川線 多磨駅より徒歩10分

西武多摩川線 白糸台駅より徒歩12分
京王線 武蔵野台駅より徒歩15分

うちで農園さんのトマトは、以下の店舗と直売所でお買い求めいただけます。
マインズショップ多磨店(定期販売)
府中特産品直売所(定期販売)

コープみらい寿町店(不定期販売)
ライフ東府中店(不定期販売)

 

インタビューブログ『農業で「根」のアイデンティティを築いていく 〜「うちで農園」と園芸福祉』全8回